■over view
静けさの中に佇む姿。遠いどこかを見つめているような表情。なめらかな木の表面に施された、奥行きを感じる彩色。
聖書や詩、民話からインスピレーションを得て、平良が木彫で表現する動物の姿には、生きとし生けるものたちが、脈々と繋いできた、壮大な物語と時間を感じる。
観る者はきっと、何かを語りかけられたようにも、自身の中の何かを思い起こさせるようにも感じられるだろう。
万物の理が、静かに、でも力強く、じわじわと沁み込んでゆく作品だ。
■interview
──ご自身の創作のテーマや、制作の手法について教えてください
家族のように身近なものから野生に生きる存在まで、動物をモチーフに木彫を制作しています。
何の動物かをあえて曖昧に制作することもあるのは、彼らが共通して持つ、普遍的かつ本質的な美しさを表現したいからです。単にかわいいだけではなく、穏やかだけど、自然の厳しさを生き抜く強さも持ち合わせる、静謐で純粋な姿から、鑑賞する方自身の中にも必ずある"純粋さ"を思い起こしてもらえたら、と。
日本における木彫は、歴史も長く伝統的な技法です。木ならではの素材感・質感を観ていただきたいので、彩色は丁寧に行っています。画材には岩絵具や顔彩を用いて、一つひとつの色が持つ、古典的で柔らかな印象を大切にしています。
──アートフェア東京2023での展示について教えてください
「はじまりから終わりまで」という大きなテーマで制作した作品を展示します。中心的な存在として構想したのが、対となる二頭のコヨーテです。静けさを感じるようなポーズや佇まいに、さまざまな「はじまりから終わりまで」を想起していただけたら、と。例えば、目覚めから眠りまで、であったり、生まれてから死ぬまで、あったり。
画像1左・2:《 Awakening 》樟、彩色 / 画像1右・3:《 UNending 》樟、彩色
私たちは、動物たちが生きる姿を見守り慈しむことで、安らいだり癒されたりすると同時に、力強さ、生命力も得ています。今、世の中は混沌を極め、世界中でいろいろな事が起きていますが、日々をただ純粋に、あるがままに生きる動物の姿から、ご覧になった方の心に何かを投げかけられたら嬉しいですね。
──最後に、今後の活動について聞かせてください
もっと表現力を磨き、一つひとつの作品に丁寧に向き合って制作したいです。
また、ホスピタルアートをはじめ、観る人の心を癒し、治療にも繋がるような取り組みにも関心があります。きっと少し先の話になると思いますが、例えば、木の良い香りに包まれた空間で、私の木彫作品に手でふれてもらいながら鑑賞する、というような、五感で楽しむ展示にも挑戦してみたいです。
■bio
1996年
長野県安曇野市生まれ
2020年
女子美術大学芸術学部美術学科立体アート専攻卒業
2022年
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了
■cv
【展示】
2018年
JOSHIBISETAN みんなの七夕 届け、願いごと(伊勢丹 相模原店)
2020年
やさしい木彫展(日本橋三越本店)
教会アート展(横浜磯子教会)
東京五美術大学 連合卒業・修了制作展(六本木・国立新美術館)
今!彫刻展(ギャラリーせいほう)
藝大の猫展 2020(藝大アートプラザ)
YEAR-END EXHIBITION OF MINI•SCULPTURES(ギャラリーせいほう)
2021年
未来(あす)への木彫展(横浜髙島屋、京都髙島屋)
第105回記念 二科展(六本木・国立新美術館)
彫刻と家(旧平櫛田中邸アトリエ)
YEAR-END EXHIBITION OF MINI・SCULPTURES(ギャラリーせいほう)
2022年
教会アート展(横浜磯子教会)
東京藝術大学 卒業・修了作品展(東京藝術大学)
春季二科展(東京都美術館)
動物百態(日本橋三越本店)
Art Jungle 藝大動物園(藝大アートプラザ)
雲. 想. 藝.(台湾 Cloud Gallery)
WOod is ODyssey(天王洲セントラルタワー)
第106回 二科展(六本木・国立新美術館)
Owls 2022(京橋 四季彩舎)
YEAR-END EXHIBITION OF MINI•SCULPTURES(ギャラリーせいほう)
クリスマスアートセッション2022(横浜髙島屋)
Anthology 干支(髙島屋大阪店)
2023年
ONE ART TAIPEI 2023(台北)
【受賞歴】
2019年 第104回 二科展 特選
2020年 藝大の猫展 準猫大賞
2021年 第105回記念 二科展 二科賞
2022年 東京藝術大学卒業・修了作品展 荒川区長賞
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